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Introduction

人口減少による労働力不足は、業界を問わず多くの企業が直面する深刻な社会課題の1つです。ABC-MARTも、将来的には避けられないであろうこの問題に対する取り組みを始めています。それが、店舗運営の省人化を可能にする新たな仕組みづくり。この「効率化店舗」と呼ばれる店舗オペレーションの開発に挑んだのは、現場のトップにあたるブロックリーダーの福間 恒維です。彼が取り組む挑戦について、本人のコメントを交えながらご紹介します。

この方にお話を聞きました

北海道東北北関東ブロック
ブロックリーダー

福間 恒維

2005年入社

Phase01

課題発見・解決策の検討

人手不足と店舗運営、
その狭間から生まれたアイデア。

将来的に人手不足の問題は避けられない。それはABC-MARTにおいて大きな課題となっていた。出店拡大が続く一方で、働く人の絶対数が減り続ける現代では、「人材採用の難しさ」が今後は深刻になっていくことが予想される。北海道・東北・北関東を統括するブロックリーダーの福間も、かつては北東北エリアのSV(スーパーバイザー)として各店舗をまわるなかで、その実感を痛烈に抱いていた。「地方であればあるほど、将来的にスタッフの採用が厳しくなってくるでしょう。でも、ご来店いただいたお客様にご不便をお掛けするわけにはいかない。このギャップを埋めるためには、何か新しい“仕組み”が必要だと感じていました」。
現場だけでなく本社の人事部などでも同じ課題意識が高まり、数年前から議論は始まっていた。そして2023年、ついに「店舗運営の省人化を実現する新オペレーション」を本格検討するプロジェクトが動き出す。ポイントは、「接客を捨てない省人化」だ。ABC-MARTの強みは“会話に基づく提案力”であり、それは現場が誇る文化でもある。その文化を守りながら、場面に応じて、お客様だけで買い物を完結出来る新しい仕組みをつくることが必要だと考えたのだ。そこで生まれたアイデアが、セルフ式の精算システムや、フィッティングから購入までをお客様自身で進められる「接客サポート什器」の導入。完全無人ではなく、必要なタイミングでスタッフが寄り添うオペレーションだ。

Phase02

プロジェクト始動

2つの店舗で始まった実験。
やってみて初めて分かった意外な結果。

こうして新たな店舗オペレーションの実現に向けて動き出したのは、2023年秋のこと。仙台と埼玉の既存店2店舗を実験場として、改革は静かにスタートした。福間は当時SVとして仙台側を担当し、現場で常にお客様の動きと数字を追い続けた。「接客を減らせば売り上げが落ちるのではないか。多くのスタッフがそう心配していましたし、正直に言えば私も不安はありました。でもフタを開けてみると、想像とは逆にお客様の滞在時間は伸びたんです」。
驚くべき結果だった。お客様が“自分のペースで商品に触れる時間”が増え、行動にゆとりが生まれた。スタッフからも、「思っていたより悪くない」「むしろ動きやすい」という声が上がるようになった。しかし、もちろん順風満帆に進んだわけではない。スタッフからは「盗難のリスクが不安」「ルールが変わって混乱する」などの正直な声も届いた。福間は何度も店舗に足を運び、企業全体の課題と、この取り組みの狙いを一つひとつ共有しながら、丁寧に店舗の理解を得ていった。「まずは店長やスタッフに、“なぜやるのか”を理解してもらうこと。そこに時間をかけました」。
その後、本社のVMD(視覚面から店舗づくりを主導するチーム)、人事、店舗開発とも連携し、店舗での実験の気づきを共有。翌春には宮城の改装店でブラッシュアップ版を導入し、さらに熊本で1号店、宮城で2号店がオープン。効率化店舗の挑戦は確かな形になっていった。

Phase03

具体的な挑戦

社内に“新しいやり方”を
浸透させるという壁。

効率化店舗の取り組みは、システムを導入しただけで完成するわけではない。最大の壁は「社内に根づかせること」だったと福間は語る。「各エリアにはそれぞれの考え方やローカルルールがあります。そこに新しい仕組みを持ち込むのは、やっぱり抵抗を感じるメンバーがいるのも当然で」。特に九州方面の店舗は効率化店舗が多く、毎回説明に飛んでいく必要があった。SVは知っていても店長やスタッフは初めて会話するメンバーも多かったという。だからこそ現場には「本当にこの仕組みで運営出来るの?」「うちのお客様に合うの?」という戸惑いや不安も当然あった。
そこで福間が徹底したのは、現場の困りごとを拾い切ることだった。在庫量が増えたときの商品コントロール、流通量と売り場スペースのバランス、消化コーナーの運用、キャッシャーの配置……。店舗が日々直面する細かな問題をすくい上げ、本社と対話し、仕組みを現場仕様に調整していった。「新しい仕組みって、導入して終わりではないんですよね。やってみて初めてわかることが山ほどある。それを一緒に改善していくのが、このプロジェクトの醍醐味でした」。2024年以降は効率化店舗サポートチームも立ち上がり、チームリーダーの福間のほか、埼玉の店長、VMD、新任SVの4名で改善のサイクルを加速していった。

Phase04

取り組みの成果

売り上げ約3倍も!
挑戦の結果が数字に表れた。

効率化店舗は現在11店舗にまで拡大。その成果は数字にもはっきり表れている。「特に良い結果が出た店舗では売り上げ前年比297%を達成。人件費対売り上げの効率は215%。正直、ここまで伸びるとは思っていませんでした」。接客を求めるお客様と、“自分で選びたい”お客様のどちらにも対応出来る店づくり。そこにお客様の価値観の多様化も重なり、想定以上の結果が生まれたのだ。
さらに、意外な副産物もあった。新人スタッフでも店内在庫の構造がわかりやすく、サイズ出しがすぐ出来るようになったこと。そして、店全体がフラットな動線になり、業務負担が減ったこと。「新人が働きやすくなるというのは、始めた時には想像していなかった効果です。これによって人材の定着率アップも期待出来るのではないでしょうか。これも本当に、やってみないとわからないことばかりですね」。
そして、既存店の責任者から「うちの店舗でもやってみたい」という声が少しずつ上がるようになったという。「ABC-MARTは現場に権限を与える文化があるので、会社から『あなたの店舗を効率化店舗にしなさい』と命じることはありません。つまり、現場のSVが『うちの店舗を効率化店舗に変えたら良くなる』と感じてもらえて初めて動き出すことになる。だからこうして声を上げてもらえるようになったことは非常に大きな進歩です」。成果が現場の反応として広まりつつあることに、福間は確かな手応えを感じていた。

Phase05

さらなる挑戦へ

まだまだ改善を続け、
店舗運営の未来を拓いてゆく。

効率化店舗の開発はまだ“完成形”ではない。むしろ、ここからが本当のスタートだと福間は語る。「店舗数はまだ11店舗。もっと拡大していく必要があります。そのために既存店のブラッシュアップを重ねて、もっと効率化の質を上げていきたいです。課題はまだまだありますし、その分、進化出来る余地も大きいと言えます」。すでに全国のさまざまなエリアへの展開も決定し、プロジェクトは確かな広がりを見せている。各エリアのSVが自ら希望して効率化店舗オペレーションの導入を申し出るケースが少しずつ増え始め、“現場が動かすABC-MARTらしい挑戦”が全国で連鎖し始めているのだ。
福間は続ける。「この取り組みは、店舗運営の未来をつくる挑戦だと思っています。ブロックリーダーとして、現場と本社を繋ぎながら、もっといい形をつくっていきたいです。何より、こうした新しい仕組みづくりにたくさんのスタッフと一緒に挑戦出来ることが、この会社で働くおもしろさ。そこに関われていることを純粋に楽しんでいます」。変わり続ける小売の現場で、自分たちが未来をつくる。そんなワクワクを抱きながら、プロジェクトは今日も進んでいく。

記載された写真および原稿は2025年10月時点のものです。